平成31年2月1日
カンボジア港湾セミナー報告
カンボジア港湾セミナー報告
JOPCA企画委員 岸本高彦・藤田佳久 
概 要
 JOPCAとカンボジア公共事業運輸省(MPWT)共催による港湾セミナーを2018年12月18日(火)にプノンペンのプノンペンホテルにて、12月20日(木)にシハヌークビル港湾公社(PAS)会議室において開催した。なお本セミナーは2014年12月に第1回が開催されており今回は4年ぶり2回目の開催となった。
 このJOPCA港湾セミナーは日本におけるJICA研修修了生の帰国後のフォローアップ(同窓生の組織化)と港湾分野での幅広い交流を目指し2010年度よりフィリピン、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、カンボジアと順次開催してきている。
 このような取り組みにJICAの関心も高かったが、今年度からはJICAも研修修了生を中心に「JICA Port Alumni」として東南アジア各国等から約20名の招聘を行い、JOPCAセミナーを始めとした港湾関連セミナーへの参加や意見交換といったプログラムを実施することとなった。
 また以前より国交省港湾局が取り組んでいる日ASEAN港湾技術者会合・セミナーについても上記取り組みとタイアップすることによる相乗効果を期待し、同時期にプノンペンにおいて開催することとなった。
 上記のように今回カンボジアにおいて日本の港湾に関する様々なセミナーや意見交換会を同時期に実施することになったことから、JOPCAの港湾セミナー参加者に加え、JICA Port Alumniの招聘者・関係者、埋立浚渫協会会員を始めとした日ASEAN港湾セミナー参加者が集まることとなった。結果としてJOPCAプノンペンセミナーへの参加者は約150名という大人数となった。
全体行程
 12月17日(月) 代表者関係機関表敬訪問
    18日(火) 【港湾セミナー(プノンペン)】
    19日(水) プノンペン港等視察、シハヌークビルへ陸路移動、シハヌークビル港視察
    20日(木) 【港湾セミナー(シハヌークビル)】
           プノンペンへ陸路移動
 
表敬訪問(12月17日)
 川崎JICA専門家に調整して頂き、セミナー前日にJOPCAメンバー代表(池田会長、遠藤事務局長、藤田、岸本)と国交省港湾局種村主席国際調整官で在カンボジア日本国大使館(別所公使、廣瀬書記官)、プノンペン港湾公社(PPAP)(バビー総裁他)、JICA事務所(菅野所長他)、及び公共事業運輸省(スン上級大臣他)への表敬訪問を実施した。
 公共事業運輸省においてはシハヌークビル港湾公社総裁など省幹部等が多数同席する中、上級大臣から「党大会がありセミナーに出席できなくて大変残念であるが、ぜひよろしくお願いしたい」との温かいお言葉を頂いた。
港湾セミナー(プノンペン)(12月18日)
 プノンペンホテルにて、9時よりセミナーを開催した。JOPCA池田会長の挨拶に引き続き、JICAカンボジアの菅野所長、在カンボジア日本大使館の別所公使から歓迎の挨拶があり、最後にセミナー共催者である公共事業運輸省を代表して水運・港湾総局のサボン次長から挨拶を頂いた。
池田会長
JICAカンボジア菅野所長 別所在カンボジア日本国大使館公使 Savong MPWT港湾海事航路総局次長
 次に角野元JICA専門家より、JICA研修生同窓会のカンボジア側の新会長に公共事業運輸省のダラ水運・港湾総局長が選出され、日本側会長には引き続きJOPCAの池田会長が選出されたことが報告された。引き続いて中尾SCOPE理事長より「港湾工事施工ハンドブック(英訳版)」の贈呈が行われた。その後参加者全員での記念写真撮影となった。
角野元JICA専門家 プノンペンセミナー集合写真
 セミナーの午前セッションにおいては、JOPCAの西島企画委員長の「日本の港湾開発と運営システム」についての講演に引き続き、カンボジア側からプノンペン港湾公社ビジネス・運営担当のヘイ副総裁による「プノンペン港の現状と将来計画」についての講演がなされた。次いで国際臨海開発研究センター(OCDI)の宍戸首席研究員より「港湾諸手続きと港湾EDI」についての講演がなされた。
Phanin Hei PPAP副総裁 川崎JICA専門家
 午後のセッションにおいては、川崎JICA専門家より「カンボジア港湾セクターにおける日本の協力」、東チモールに派遣されている笹JICA専門家より「二国間港湾技術交流-カンボジアと東チモールの事例-」と題し国際的な取り組みについて講演がなされた。次いで国土技術政策総合研究所の竹信主任研究官から「技術基準の重要性と日本における最近の技術課題」、そして東工大の岩波教授より「港湾インフラのメンテナンス」と題して技術的な課題について講演がなされた。
 その後質疑応答を経てカンボジア側参加者全員に対する修了証書と記念品の授与が行われた。最後に藤田JOPCA企画委員より今回のセミナーの総括とともに、今後とも両国の港湾関係者がより緊密に連携を取り両国の発展貢献していくことに対する期待が表明されて閉会となった。
藤田JOPCA企画委員
 なおセミナー参加者は全体で148名(カンボジア側からは68名)であった。
港湾等視察(12月19日)
 19日は、3件の視察を行った。1件目が、プノンペン市の中心部、トンレサップ川に位置するプノンペン港の多目的埠頭を、プノンペン港湾公社の案内により視察した。本埠頭は内戦後日本の無償協力により整備されたもので、以前はコンテナターミナルとして使われていたが新ターミナルが出来てからは、在来貨物の取り扱いやクルーズ船の接岸施設として使われている。我々が視察した際もベトナム船籍の小型クルーズ船が停泊していた。本埠頭に離接する本部建物横の国旗掲揚塔には、日本国旗がカンボジア国旗と並び掲揚されていた。
 次いで、トンレサップ川にかかるチュルイ・チョンバー橋の改修工事現場を視察した。この橋は、内戦前の1960年代に我が国資金により建設されたもので、カンボジア国王から「日本・カンボジア友好橋(日本橋)」と命名された。しかしながら開通から50年以上が経過する中、著しい損傷が発見され大型車両の通行が制限されること等により交通の円滑化に支障が生じているため、現在我が国の無償資金協力により全面的な補修工事が行われているものである。当日は工事を行っている大林組の辻本工事事務所長から、エコフリーブラスト工法やSFRC舗装など日本の技術を活用した工事内容について丁寧なご説明を頂いた。
 その後バスで6時間余りをかけてシハヌークビルに移動し、シハヌークビル港湾公社のご協力を得て、日本の協力により整備されたコンテナターミナルや多目的ふ頭(昨年6月完成)を中心に視察させてもらった。シハヌークビル港湾公社に派遣されていた歴代のJICA専門家である、角野さん、坂田さん、笹さん、池田さんから、同港の発展の歴史と港湾活動の現状及び今後の開発計画について、派遣されていた当時の苦労話も踏まえながらご説明を頂いた。
港湾セミナー(シハヌークビル)(12月20日)
 シハヌークビル港湾公社会議室において、8時半よりセミナーを開催した。JOPCA池田会長の挨拶に引き続きシハヌークビル港港湾公社のホン副総裁からご挨拶を頂いた。
Chhung Hong(ホン)シハヌークビル港港湾公社副総裁 シハヌークビルセミナー集合写真
 次に角野前JICA専門家よりプノンペンセミナー時に選任されたJICA研修生同窓会の新たな会長についての報告がなされるとともに、中尾SCOPE理事長より「港湾工事施工ハンドブック(英訳版)」の贈呈が行われた。その後参加者全員での記念写真撮影となった。
 セミナーは筧JOPCA会員による「日本の港湾の管理運営」に始まり、薮中JICA専門家による「シハヌークビル港における日本の協力」に関する報告、カンボジア側からソクンティア マーケッティング部長による「シハヌークビル港の現状と将来計画」についての説明が行われた。更にSCOPEの池田研究主幹より自らの勤務経験に基づく日本の港湾の現状と課題について、田村主任研究員(神戸市役所からの出向)より神戸港のクルーズへの取り組み等についての報告が行われた。
 その後質疑応答を経て参加者全員に対する修了証書と記念品の授与が行われ、最後に岸本JOPCA企画委員より今回のセミナーの成功と再会を約束して閉会となった。
薮中JICA専門家 Chey Sokuntheaマーケティング部長
池田元JICA専門家 岸本JOPCA企画委員
 なおセミナー参加者は全体で64名(カンボジア側からは34名)であった。
最後に
 今回は直前になって同時期にカンボジア人民党の党大会が開催されることになり、カンボジア側の公共事業運輸省大臣やプノンペン港及びシハヌークビル港の公社総裁といった方々のセミナーへの出席ができなくなったことは残念であった。
 しかしながら今回のセミナーや意見交換を通じてカンボジア側の港湾整備にかける思いや技術力向上に対する熱意を改めて感じることができた。また港湾視察や車窓の風景を通じて急速に変貌するカンボジアの社会経済状況を知ることもできた。特に今回は日本から歴代のシハヌークビル港のICA専門家が4名も参加し旧交を温めるなど人的交流の面で非常に有意義なものであった。
 このカンボジアでのJOPCA港湾セミナー開催にあたっては多くの方々のご協力を頂いた。特に港湾関係の3つのイベントが同時期に開催されるという非常に多忙な状況であったにもかかわらず川崎、薮中両JICA専門家には準備段階から大変お世話になった。また大使館の廣瀬書記官やシバタ工業の木森さんにもいろいろとご助力頂いた。今回のセミナー開催にあたってご支援を頂いた全ての方々に改めて謝意を表し最後の言葉としたい。